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始まりはthe oneから
「絢音だったら、絶対、プリンセスラインだろ。はー、もう取締役会がなかったら、絶対行ってたのにさぁ。今すぐでも、行きたいくらいだよ。」
窓から外を見ながら、東条瑛は先程から、婚約者へ甘い言葉を囁いている。
取締役室の面々は、先程から呆れたような表情でそれを見ているのだが、瑛はそんなことは、何処吹く風だ。
「写メ送れよ?絶対だからな。…うん。やっぱりさあ、今度一緒に行った時に決めよう。え?今日…?今日は今日でドレス姿、見たいから送れよ。…ん、じゃ、また今夜。うん…ありがとう、じゃあな…」
蕩けそうな顔で、電話を切った東条瑛が、寒―い顔で見ている部屋の中の人物達ににっこり笑う。
「何か?」
「今すぐでも行きたい?どの口が?」
そう言ったのは、従兄弟であり、この会社の取締役の1人でもある村上侑也だ。
ここは、数年で大きくなったIT関連企業である。
もともとは瑛の父が立ち上げ、システム開発で、成長した。
役員についてはほぼ、同族。
ありがたいことに、皆それなりに優秀なおかげで、会社の運営は上手くいっている。
しかも、先日まで、皆の頭を悩ませていた瑛の浮名も、お見合いで出会った婚約者と、婚約した途端にピッタリと収まったのだ。
「文句あるか?婚約者だぞ。」
「律、瑛はどうしたんだ?最近付き合いも悪いしさあ。婚約とか…ブラフなんでしょ?」
つまらないのは、遊び相手でもあった村上侑也だった。
侑也はふわりとウェーブした茶色の髪の持ち主だ。
色素が薄めなので、色白で、一瞬、繊細そうな美少年にも見えるが、意外と背も高く、中身は紛うことなく、肉食系だ。
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