天鳳伝ー千遜防衛編ー

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元鄭国領土、没楼(ぼつろう)この他の村々のちょうど中心にいちするこの地 「凱信(がいしん)殿、申し上げたい事が、、」 「ん?なんだ。もうしてみよ。」 平原地帯の丘に位置するこの地で最も高いところから全体を見ていた凱信に 対して腹心・蒙克(もうかつ)が言う。 「はっ。先日落としました。序祥(じょしょう)があそこになります。  昨日は会議で距(きょ)と袁詞(えんし)を落とすとの事でしたが  控えた方がよいと思われます。」 蒙克の突然の反論を自分の考えを翻す内容の進言と判断した凱信は剣を手に した。 それを見たその場にいたものは彼の行動に焦りだす。 「蒙克よ。お前は今言ったことがわかっているのか?この軍の現在の大将は  この俺だ。かつては鄭王に等しい身分で仕えていた者同士。  一度の無礼は水に流すが直球すぎる意見は命取りになるぞ」 その剣先は蒙克の首元に向けられていたが彼はその刃を指で挟んだ。 「それはこっちの台詞ですよ。凱信殿、我わ王を亡くしたもの同士。  新たに生きていくために手を組んだに過ぎない。  戦力として、凱信殿に大変助けられているのは礼を言うが今でも  我らは等しい身分と思っていたのだが違いましたか?」  退かぬ蒙克の態度に一瞬、焦っている。そして、突然笑いだす。 「がははは、相変わらずお前だけはいけすかんな。  その強情で何度も軍議で意見を覆されたのを忘れておったわ。  わかった。こちらから詫びをいれよう。  すまぬの短気であるがゆえに許せ。」 「いえ、ご理解いただけてこちらも助かります。」 「して、その理由を聞こうか?」 蒙克はその根拠を語りだす。 「今われらがいる徐祥をふくめ西にいちする刔(けつ)・倫獅(りんし)まで の領土を収めたわけですがこれから先、東の涛(とう)・拠士(きょし)・千 遜(ちそん)一帯は慎重にいかねばならぬのです」 「だがら、なぜだ。」 「東に走らせている密偵の話では例の義勇軍がもうこの一帯にまで勢力をのば   し始めているとのことです。」 「な!あの民の寄せ集めの軍がなぜここまで。」 「報告によると、3つの村以外の集落や族なども巻き込みながらすごい速さで    成長しているそうです。わが軍にはまだ到底力及びませんが」 「なら、はやくつぶすべきではないか。」 「潰すのは容易ですが、それではだめなのです。彼らを統治し新たに我らが  勢力を起こしたところで周辺の他国の餌食になるだけです。」 「獅賀と狼(ろう)か、、、」 「ええ、そしてそのことですぐに彼らを攻めれない理由がもう一つ。  東端にいちする獅賀ですが鄭滅亡後何度かこの地に攻めたとの報告があった  があり、その都度彼ら義勇軍は獅賀を追い返しているのです。」 「それは俺も聞いた。村同士が集まった集団なだけなのにどこにそんな力が」 「それはきっと、義勇軍軍長・宋紀(そうき)の軍略やあの地に集結した将    達の力でしょう。これを我が攻めて滅ぼすこともできますが、先々の事を  考えると彼らを降伏や服従させ勢力をすべて吸収することが最善と思われま  す。」 「なるほどな。癪に障るが奴らの力もあれば助けになる。」 「そして、これを実行するためには時がかかります。幸い我らは西一帯からの    兵糧もありますから、前線からじわりじわりと力をそぎ落としましょう」 「わかった。西一帯の総指揮は蒙克に任せた。我らはここぞというときに軍を    準備させておく。もし、勢力を復興できた暁には新しき国の総司令にしてや  ろう。」 「ありがたく、、、」 こうして、彼らは没楼の地から東一帯の侵攻作戦の準備に入った。 一方、義勇軍陣営西端の前線地・涛では今にも応戦しようと5000もの軍 が起こっていた。 「宋紀様、義勇軍中央軍2000、左軍、右軍1000配置につきました。」 「徳李(とくり)よ。ご苦労であった。では、そろそろ始めようかの。」 義勇軍軍長・宋紀は軍の最前線にて総指揮し今までにない兵力をもって 鄭残党軍を倒すべく攻めようとしていた。 そして、右手をあげ支持を出す。 「皆の者!よく聞け。鄭国が滅んでより3年。我々は奴ら残党兵に長らく辛酸  をなめらせ続けてきた。  しかし、そのきつくつらい日々は今日の戦を持って最後となるだろう!  その日を一日も早く迎え我ら全員が人間らしい生活を送れるようにどうか  勝利の為力を貸してほしい!」 「宋紀様ー!我らは全力でお供します!!」 「残党兵を倒して自由になるんだー!」 「残党兵を殺せーー!」 各地で宋紀の激にこたえ兵たちが叫ぶ。 再び宋紀はそれを静止させ続ける。 「そうだ!皆の者!その気持ちを胸に全力で戦え!その思いは全て前線立つ    この元鄭国将軍・宋紀が受け止める。  そして、勝利の為、前線の我らの隊がお前たちの道を切りひらく。  各兵らはわれらにつづき勇敢に戦うのだ。  よいか!この戦勝つぞ!!」  その瞬間、軍全体に歓声が沸いた。 「宋紀将軍!宋紀将軍!!」 「将軍!」 陣営全体の士気は最高潮に達した。 「全軍!!進めーーー!!!」 宋紀の軍が進軍を始めた。 そして、右軍。 「融嬴(ゆうえい)殿。こちらも準備整いました。」 「そうか、中央・右軍は進軍を開始した。いいころ合いだろう。  第4部隊を呼べ。」 「はっ。」 「もう、いますよ。」 そこには一人の騎馬した若い兵がいた。 「ふん。来たか。作戦は聞いているな。」 「ええ、作戦は全て把握しています。」 「そうか、失敗は許されぬぞ。戦を左右する策だ。」 「融嬴様は心配性ですね。ですが、心配いりません。必ず成功させます。」 「よし、武運を祈るぞ。第部隊長・慶(けい)。後はあの地で待っておる。」 「ありがたく。融嬴様こそ。ご武運を。」  慶はその場から反転し後ろへさがる。  しばらく戻ると100人部隊が5つそして、部隊に一人づつ隊長が配置されて  いるそこにいた。  慶はその第四部隊の隊長になっていた。  「よお。隊長。戻ったな。」大男が慶に声をかける。  「ああ、周(しゅう)。準備はいい?」  「もちろんだ。残党兵のやつらをぶっ潰そうぜ。」  「よく言うぜ。今日までかるくビビってたくせに。」  「う、うるせーよ!郭李(かくり)。そんなてめーこそ。   大丈夫なのか?」  「俺か?余裕だ。こいつらにもしっかり仕込んでるしな。」  郭李は指で後ろの50人の兵を指さした。  周・郭李は慶の部隊の副長だ。  「よし、そろそろ。行くぞ。」  500人の兵の準備は整った。  進軍開始だ!!」  「おおーーー!」  慶ら率いる500人の部隊は進軍を開始した。  
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