入軍

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入軍

鄭国残党軍と義勇軍の戦いから5年前。 鄭国の英雄と言われた関丈(かんじょう)の死後ほどなくして鄭国はその戦で 勝利を収めたもののその後の侵攻は熾烈を極めた。 その結果、最重要地点陥落、各地の残りの軍事拠点の援軍もすべて獅賀軍に 封じ込まれ鄭国王が降伏し鄭国は滅亡。 そして、獅賀はその領地を統治しようと将らを送り込んだが鄭の国民達は それを拒否。 降伏し服従しなかった将らとこれらを撤退させた。 その後も、獅賀・南の大国狼(ろう)国の侵攻は続いたが、 元々屈強な鄭軍はそれをさらに撤退させつづける。 しかし、それは長くもつづくはずもなく次第に各軍は力を失い始めそして、「 長く続く戦で兵糧もなく鄭国土は荒れ果てた地へと変貌した。 残された兵らも国境は全て封じられ飢えをしのぐ生活へとしいられていく。 そして、遂に鄭の軍たちは自らの力で生きる為、民を殺し略奪に走るものと それでも民を守り続ける者たちへわかれていく 次第に両者は勢力をおこし対立、戦へ移っていくのであった。 ー千遜村ー ここでは、民を守る為軍をおこした将らが「義勇軍」として軍をおこし他の」 村々の兵らも呼応し義勇軍の一大拠点の一つとして機能していた。 そして、ここに一人の青年が義勇軍本部の前に立っていた。 (遂にこの日が来た。) 覚悟を決めた表情で青年は本部を見ていた。 すると、彼の腹で音がなった。 「はあ、そうだった。色々あって何も食べてなかったんだ。まだ、時間  あるし飯を食べよう。」 青年は本部を後にし、食事ができるところへ移動した。 案内された席に座る。あたりを見渡すと武人や役人、賢人らがたくさんいた。 すると定員が肉と酒をもってくる。 「お待たせ。どうぞ。」 「ありがとう」 青年は食べ始める。 「兄ちゃん、どこから来たんだ?ここらへんじゃ見ない顔だな。」 「ええ、先日まで北の山にこもってて」 「へえ、求道者ってやつかい。大変だねー。  しかし、ここ最近は色んな奴らが来るからにぎやかでしかたがない」 「義勇軍の本拠地ですもんね」 「ああ、本当に彼らには助けられてるんだ。鄭国滅亡後、他国に攻められ自国  の兵らに襲われ血を吐くような生活を余儀なくされた俺たちを彼らは助けて  くれたからな。最近では各地から鄭国の領土だった地から残っていた武人  賢人らが集まるようになってきた。このままいけば残党軍も目じゃねえよ。  兄ちゃんも義勇軍入隊希望者か。」 「ええ」 「頑張りなよ。最近では入隊試験が相当厳しいって話だ。いよいよ。大きい戦  が始まるかもってはなしだからな。」 「はい。ありがとう」 すると反対から木のテーブルが壊れ人が青年の足元へ倒れてきた。 その人を確認し、その方向を見ると相当体格のいい大男が立っていた。 「くそ!何しやがる!!」 「はあ!?とぼけんじゃあねえ。喧嘩売ってきたのお前からだろうが!!」 大男が言う。 相手の男は鼻血をだしたまま 「席をいきなり譲れと言われすんなり譲るやつがいるわけないだろう!」 「うるせーよ!俺の言うことは絶対なんだよ!!この佳句兎(かくと)村の    周(しゅう)様の言う事はな!」 「よお!よくいった!兄貴!」 「そうだよ!!周の兄貴に逆らうのが悪いんだろうが!!一昨日きやがれ!」 子分たちがあおる。 「くそ、、、」 くやしがり去ろうとする男の手を青年は握った 「?」 すると青年は大男に向かい合った。 「あん?なんだ?坊ちゃん。」 「あんた。こいつに謝れよ。」 「何だと?」 「どこの誰だかしらねえが、無礼を働いたんだから謝れっていってんだよ!」 次の瞬間、鬼の形相で周を睨む。 「っつ、、、」 その場にいたものが彼の醸し出す雰囲気でたじろく (なんだこいつ。なんて表情しやがる、、、。  くそ、なめやがって) 「そんな目で見てんじゃあねえ!クソガキが!!」 子分の一人が殴りかかる。 しかし、次の瞬間彼の頬に青年の拳が炸裂しそのまま酒場の物を巻き込みなが ら壁へ激突する。 「!!」 さらにその出来事に周りの物たちは圧倒される。 「おい!小僧!!いい腕だ。だが、この俺様の子分に手を出したんだ。  覚悟はできんだろうな。」 「関係ねえ!」 周は血相をかけ青年に襲い掛かる。 「いい度胸だ!!殺ってやる!!」 青年は周の拳をそのまま受け止める。 「なっ!!」 「体格いい割に軽い拳だな。」 「くっ!!」 青年は周の腹に一撃をくらわす。 衝撃で後ろへ吹っ飛ばされ持ちこたえるが 「おええええ!!」 衝撃で胃の内容物を吐きそのままうなだれる その姿を見ていた青年の後ろから声がする。 「慶!やっとみつけたぞ。どこいってた!」 「詠訟(えいしょう)さん。」 そこにいたのは甲冑姿の義勇兵の男だった。 彼はここ千遜村出身で義勇軍に入隊してしばらくたつ、屈強な体格に さらに周りの者は息をのむ。 「ん?どうしたんだ。こいつ。お前がやったのか!」 「違うよ。飯食ってたら絡まれたんだ。で、仕方なく、、」 「お前じゃねえか。相変わらず変わらねえな。かあーっときて切れたんだろ」 図星で慶は何もいえず黙り込む。 「店主。」 「は、はい」 「わるかったな。うちの連れが。これで勘弁してくれ」 詠訟は店主に金を渡す。 「こ、こんなに、、、」 「詫び賃だ。家具とかも壊れてるからこれ使って」 「滅相もないです。、、ありがたく」 「わるかったな、、。行くぞ。慶」 詠訟は慶の耳をひっぱり店の外へ移動する。 倒された周は気がつき頭を押さえる。 「くそ、、、」 すると、店主はあることをつぶやく。 「慶?慶、、、どっかで聞いたことがあるような、、、」 しばらく考えあることを思い出す。 「どうした、店主?」 周はその様子の店主に話をかける。 そして、店主は思い出す。 「思い出した。慶、、、あの慶だ!戻ってきたんだ」 「慶?」 「ああ、かつて千遜出身で鄭国の英雄・関丈様の息子。そして、5年前獅賀に  ここが襲われたときに一人で刺客に立ち向かい撃退した少年だ。」 「少年で刺客を!嘘だろう」 「嘘じゃない。それでここは救われたんだ。だが、父・関丈様は戦で戦死され  母も襲撃で殺され一夜で両親を失ったんだ。  それからは関丈様の戦友・燕備(えんび)が引き取りともに山籠もりされた  。生きていたんだ。慶はいきていたんだ。よかった。」 店主は自分の息子が生きていたように彼の生存を喜んだ。 詠訟はそのまま慶を小道に連れていった 「おい、入り口で待ち合わせの約束だろう。あのころの村とは違うんだ。  どんなやつがいるかわからん。気をつけろ。」 「まるで、父親だね。へへ。詠訟さん、ありがとう。  でも大丈夫だ。今のは単なる事故だし。もめごと起こす暇なんか  俺にはないよ」 「そりゃ、そうだけど、、、  俺はお前が小さいころから知っているから心配なんだ。  できれば俺が親代わりでもかまわんぞ。」 「本当にありがとな。でもまあ、これから義勇軍になったら、毎日  一緒だしな」 「てか、文をよこして内容にびっくりしたよ。  義勇軍に入りたいだなんて。」 「まあね、ちょっと事情ってもんがあるだよ。」 「親父さんと燕備将軍の事か?」 その瞬間、慶の表情が変わった。 「やっぱりそうなんだな。  慶、みずくさいぞ。親父さん死んで燕備将軍に引き取られてその燕備将軍も  死んだ。いったい何があった?」 「今は聞かないで、、、、ある約束を果たす為に、戦場に行かないといけない  んだ。」 (約束?) 「、、、わかった。まあ、お前がいたら義勇軍は安泰だな。まかしたぞ」 内容をすりかえるように詠訟はにこやかに答えた。 「、、、ありがとう」 慶はそのやさしさに感謝した。 そして、慶はしばらく時間をつぶし、義勇軍本部の前に再び行った 本部前には今回の入軍試験を受けようと多くの男たちが集まっていた。 地方の有名な武人や剣の達人、大量の巻物を持ち待つ若者やいかにも役人と いう者まで様々な者が集結していた。 「君、今さっきの?」  慶が振り返るとそこにいたのは先ほど、飯屋で大男に殴られた男だった。  「あ、飯屋で殴られた人」  「ちょっと、その覚え方やめてもらえる、、まあ、いいや。   君も義勇軍入軍希望者だったんだね。」  「あんたもか。そのなりで大丈夫なのか?」  「そんな言い方やめてよ。俺は軍師希望。   隣町の叙(じょ)で軍略とか勉強してたんだ。      今世間は乱世だからね。自分の頭脳を義勇軍の為に使おうと思って   君らと違って僕は頭で戦うんだ。」  「軍師、、、すげーな。」  「だろう。もし、合格したら同じ義勇軍だ。よろしくね。」  「ああ」  しばらく二人で話しているとまた別の方向から大声が聞こえた。 「あ!てめーら今さっきの!!兄貴!こいつら、飯屋であった奴らですよ」 「あん!いちいちうるせ、、、、」 慶の前に現れたのは大男・周だった。 「よお、今さっきはどうも。」 「お、おう。、、なんだ。お前たちも志願者なのか?」 「は、はい。彼は兵部で僕は軍部。」  男は周へ敬語で答える。 「そうか、俺も兵部だ。頼もしいな。あんたが兵部で一緒なら、まあ、  二人ともさっきは悪かったな。子分のこいつらをボコられちまったから  ついかぁーとな。もう、勘弁してくれや。」 「ああ、いいよ。なんとも思ってないから」 そして、三人は会場の開門までその場で待っていた。 その本部3階ではある部屋でその群衆を見ている者たちがいた。 「あれが、かつての英雄・関丈の息子か。」  義勇軍幹部の一人。謄高(とうこう)。かつて、鄭国建材の頃。  他国との戦で勝利を収め常勝将軍呼ばれた鄭国の猛将の一人。  昔から団長・宋紀の腹心として活躍した男である。 「ええ、軍員の詠訟の知り合いだそうです。」 「そういえば、奴も千遜の生まれであったな。そうか」 「関丈将軍の息子ということですが。  これまで戦場に出たことはないそうでこれが初陣だそうです。」 「ほお、今までは何をしておった。」 「詠訟が皆に話していた話では、山にこもっていたとか。  燕備将軍が滅亡前に隠居されその後、彼を引き取ったと聞いています。」 「燕備?あいつか。なつかしい名だな。  父が関丈で師が燕備。鄭の二大将軍に育てられた男ということか。」 「これは期待できますね」 「いや、それとこれとは別だ。戦場とはそんな甘いものではない。  力があるだけでもいかん。知略がたけていてもいかん。  武人風情が軍人となり即命を亡くした奴を多く見てきた。  戦場では、生半可かものは一切通用しない。  命や自分が持っている者をすべて使い果たし生に執着してでも生きようと  する者にしか勝利はない。  まあ、一番大切な物は別にもあるがな、、、」  男は謄高を見て壮絶な人生を送ってきたことを理解した。 「まあ、まずは試験だ。じっくり実力見せてもらう。関丈の息子・慶」  そして、軍部・兵部の入団試験がはじまった。 会場には4千人も登る人々があつまり、かなりの熱気があたりを立ち込める そして、兵長の一人が彼らの前に現れた。 「皆の物これより、義勇軍の入団テストを行う。  なお、今回は諸事情により入団した者たちは即刻、義勇軍の1000人  部隊として前線に組み込まれる。  そのため、各地方から腕自慢や秀才の者を徴集した。  そして、その戦で武功を上げたものは身分関係なく昇格を約束しよう。  我々も勝ち上がってきた君たちと前線で共に軍として戦えるのをまっている  以上だ」 そういうと、会場に歓声が響き渡った。 そして、即刻4000人もの武人が2000人まで絞られた。 形式はバトルロワイアル方式だった。 まずは一人の力を信じ勝ち進むことが求められた。 そして、、、、 定員数まで絞られた慶達は入軍を許可された。 「はあはあ、なんとか勝ち残ったぞこのやろう!!」 周がいう。 「慶、お前もいるな。さすがだぜ。」 「大丈夫か?周。お前ぼろぼろだぞ。」 「うるせーよ。お前みたいな化け物とはちがうんだよ」 そして、小休憩をはさみ次の号令がかかる。 「合格者はここへ。次にすすむぞ。」 「え?2000人に入ったから今日は終わりじゃないのか。」 「とにかくいってみよう。」 慶達は集合場所に行くと、2000人は1000隊を二つに分けられ、さらに500、 そして100人隊を5組にわけられ、各集合場所へ集められる。 遠くから見ていた詠訟が言う。 「これからが本番だぞ。慶」 その横にいた兵が言う。 「そういえばお前の言っていた手練れも残ってたらしいぞ。」 「当たり前だ、あいつはここまでくるってわかったさ。てか、あいつが   こんなところで舞えるわけがない。」 (だろ。慶。) 慶達の100人隊。 担当の兵が現れた。 「入軍テストご苦労。  疲れているとは思うがこれよりこの100人隊の隊長を決める。  なお、ここにいるのはいつもと違って皆が強く、賢い者たちだ。  だから、これよりは’手段は問わず最後の一人になるまで生き残れ’  それが100隊隊長への条件だ。以上」 兵が戦場を後にすると100人の者たちは一気に殺気立った。 「まじかよ!それが条件かよ。簡単じゃねえか。なあ、慶。」 「、、、、そうもいけないみたいだぞ。」 「え?」 慶は感じていた。 その雰囲気の変化を。 確実に一人ではない集団の殺気が自分たちを襲っているのを その真ん中に陣取る一人の男。 「ようこそ。楽しい楽しい戦場へ。ってか、あんたらの墓場だがな」 戦場は一気に二分された。 慶、周を含む10人の集団とその男含む90人の集団とに分かれていた。    
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