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「和巳、行くぞ」
「……遼太、別に俺のこと待ってなくていいのに」
「うるせえ。朝の弱い和巳くん。ほら、講義に間に合わなくなる」
僕、香月 和巳をいつも心配してるのは久我山 遼太。
顔は男臭いけど整ってて……背も180オーバーでモテる。
僕は平凡な顔………ええ、童顔ですよ。背もギリ170に届かない(涙)。
僕たちは生まれた時からの腐れ縁で高校大学、学部まで一緒。おまけに同じマンションの隣同士。
僕らの住んでるマンションは久我山ん家が持ってるマンション。親同士も仲がいいお陰で僕は遼太とルームシェアをしてる。勿論 家賃も格安だ。
そう、こいつ 久我山ん家は不動産屋だ。
実家から大学まで約一時間。十分通える距離だけど、朝が弱い僕は少しでも近い方がいい。
大学まではマンションから駅まで徒歩五分、そこからバスで約十分。
街からちょっと外れてるけど、駅からバスが出てて便はいい。
お陰で長閑だ。周りには家もあるし近くに大学が三つあるお陰で飲食店もそれなりにある。
◇◇◇
「何とか間に合ったな。初日の講義で遅刻なんて最悪だからな」
「はいはい。ありがとうございます。遼太さん。……いてっ!! 遼太 痛い!!」
「バカな子ほど可愛いってな」
むうぅ………遼太め………。頭 叩かなくてもいいじゃん。
無事最初の講義が終わり次の教室へのんびり移動する。
「次は別だったな。じゃあ 後でな。ちゃんと(講義)出ろよ!!」
「分かってるよ。じゃあな」
大体同じ学部だから講義も殆ど同じだけど、一年生のうちに取れる単位は取っておく方がいいと聞いた。だから取れる単位は取る。その中で、人気がある講義だと抽選になる。そう、僕は外れて遼太は当たったのだ。
ため息ひとつ吐いて 次の教室へ行く前に自販機でお茶を買った。
飲みなが廊下を歩いてると、窓の下にある桜の木を見上げてる男が見えた。
ドキッ とした。なんで………どうして? その人から目が離せない……。と思ってたらその男と目が合った?……ドキドキと心臓がうるさい。慌てて目を反らし、もう一度見るともうそこには誰も居なかった。
何…………なんで………なんで…………落ち着け。
マボロシ…………幻だよ。
大丈夫。大丈夫とドキドキとうるさい鼓動を落ち着かせようと自分に言い聞かせる。
それでもさっき見たせいで嫌な汗が出る。
はっと我に返り 遅刻する と 俺は急いで次の教室へと向かった。
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