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はじめに
「あのさ、僕らでラジオっぽいことやってみない?」
「ラジオっぽいこと?」
真っ暗闇の公園で二人の男がブランコに座っている。
「そう。このブランコでさ。いっつも色んなこと話してるじゃん。イライラとかをぶちまけてるわけだけど、それをラジオだって意識してみたら考えがまとまって、明日への一歩につながるかもしれない」
「ただ話してるだけだと考えがまとまらないってか」
「そう。人に聞かせてるつもりだったら、話してることはぐちゃぐちゃでも考えはまとまるし、面白そう」
「なら、そうするか。でも、二人だけだとラジオって言ってもおたよりくれるような人いなくないか?」
「そこはノリで。お互いに話題を適当に考えた名前でおたよりを読んでる風に出したらいいんじゃないかな」
「何それ虚しくないか」
「別に?面白ければ僕は何だっていい。二人で話してるだけっていうのもつまらないしね」
「つまらないのかよ」
「いや、そういうことじゃないけど。あ。そろそろ帰らないと殴られちゃうや。もうそろそろ十二時だしね」
「そうか。相変わらず門限は遅いんだな」
「まあね。暴力親だけどそこらへんは良心的なのかな?」
「良心的だとはいえねぇけど」
「まあ、ばいばい。明日からやろうね!」
「おうよ」
片方のブランコは乗り手を無くし、ゆらゆらと揺れる。
「そろそろ俺も帰るか」
もう一つのブランコも乗り手を無くしゆらゆらと揺れる。月明かりに照らされたブランコには不思議と楽しさが残っていた。
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