サント・マルスと大陸の覇王 巻の7

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その65.母なる星  南大陸連邦議会での具体的な内容はインターネットで世界中に瞬時に 伝えられた。その内容には流石の各国の神々も驚きを隠せない。 「寓話だ。」「空想上の理論だ。」 と反発も多かったが、イブリスの降臨はともかく、この惑星内の国々が 自体が、一つに集結しようと手を取り合って行こうとしているのは 事実だ。 「この惑星には人間達が付けた名があったな。」 リュッフェン国立博物館の会議室で私とクリフ大統領、そしてサント・ マルスが南大陸連邦議会でのネット画像を見ながら今後の事について 話しをしていた。 「この惑星の名はエーアデ。この名の命名については未だ謎の部分が あって、はっきりとした由来はないらしい。太陽を中心として決まった 周期で軌道を周回する星はこのエーアデの他にも八個の惑星あり、 太陽から数えて一番目が水雫星(メルクーア)二番目が金珠星(ヴァイナス、ヴェーヌス)そして三番目がこの星だ。」 私は、サント・マルスに説明した。 「確か四番目が火焔星(マルス)私の名の由来だと聞いている。」 「そのとおりだ。」 「科学者が言うには、そもそもこの星は始めから一塊ではなく、幾つもの小惑星が集結して出来た星だと言うのが最近最も有力とされている説だ。と言うのも、大陸大陸それぞれ地質を分析すると、各地で全く別の地質である事からそういわれている。そして、それが一塊になるにつれ、 遠心力を持ち、少しずつ自転しながら宇宙を漂っているうちに、この 太陽の引力に引き寄せられて軌道を周回するようになったと言われて いる。先日、デルシャで聞いた話を基にすると、大陸神ユーラントが手に 入れた強き光というのは、この惑星が太陽の引力に引き寄せられ、固定した軌道を周回するようになった為、太陽の光を定期的に受けるように なったと考えられる。」 私はそう言ってもう一度考えた。クリフ大統領、いや、クリフ氏は 「そうですね。一般的にはそう言われています。そして先程ロニエール さんから聞いたデルシャのセルデゥス神との話を合わせると、小惑星が 集結しながら宇宙を彷徨ううちにいつしか光と闇が誕生した、という事 なのでしょうか。」 「そして僅かな光の当たった場所に神は生まれ、当たらなかった場所には闇が存在した。その闇とは、まさにセルデゥスの言う『混沌』だろう。」 「『混沌・・・。』」 サント・マルスには何か思う事があるらしい。 「何か分かる事があるのか?。」 「いや・・・。」 少し沈黙があった。 「私の中にヴァルタヴルカンという混沌が存在するであろう。その力 いつ何時目覚め、再び暴走を繰り返すのではないだろうかという不安が 未だある。もし・・・万が一私が我を忘れて暴走を始めたら・・・。 その身の中にある大陸神の力で私を消滅させて欲しい。頼む。」 「何ですって!!。」クリフ氏は声を上げた。 「もうこの国が・・・私が守るべき国が崩壊するのを見たくない。 それは守護神なら皆思うところだ。」 「馬鹿な事を言うな。」 私は静かに言った。「しかし。」 「その時は全力でヴァルタヴルカンを封じてやる。世界中の神の力を 借りてでも。」 「可能なのか・・・?。」 「可能だろうが不可能だろうが、この惑星を、我等の未来を守る為 やるしかないだろう。」 だが、サント・マルスはまだ納得がいかないようだ。 「守護神だけに皆国の安寧を押し付けるつもりは無い。『自力で国を 守ろうとしない王など、守護神が創りし大地には必要ない。』そう言ったはずだが、忘れたか?。」 私はサント・マルスにウィンクして見せた。まだ戸惑っているサント ・マルスの肩に手をやり、火焔星のようなその瞳を見つめて言った。 「僕は、主君の命令を聞くものだ。」 その言葉に、サント・マルスもやっと笑顔になった。
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