始まりの悲劇

2/4
前へ
/5ページ
次へ
「はい、じゃあ席に着いて。正座。礼」 「お願いしまーす」 担任のマッツゥ先生が号令をかける。 「えーまずは、先生の自己紹介をする。終わったら君たちの番ね」 マッツゥ先生は自分のことを色々教えてくれた。 外国で生まれ、日本とのハーフだということ。壁ドンの練習をしていたら愛車の窓ガラスを割ってしまったこと。ハゲが目立ってきたのでカツラの購入を考えていることなどなど。 「ではこれで先生の自己紹介を終わります。出席番号1番の方から自己紹介お願いします」 これから自己紹介かぁ……。新しい友達を作れるように張り切っていこっと。 妥当な感じで趣味とか好きなこととか話した方がいいよね。共通の話題で友達が作れるかも! あ、あと、好きな曲とかハマってること話すのもアリかも! う〜ん、どうしよう……発表したいことが多すぎるなぁ……。 「次、7番」 あれ、自己紹介もう私の番!? 「はーい!」 急いで返事をする。焦るな、焦るな……まずは名前からだ。 「えっと、雲知運子です!」 と、直後、クラスにどっと笑いが巻き起こった。 「ウンチとウンコだって!きったなー」 「トイレで流されろよ。あははっ」 男子たちが笑っている。 「ち、違うよ!」 私は全力で否定した。 「私のお父さんが気象予報士でね、先祖代々続いてるもんだから、名字が雲を知るってなってて、お母さんが運がいい方の人だから、運がよくなる子供になってほしいって意味で運子になってるんだよ!」 そう言い放ち、誤解を解くことを試みたが、周りからは「でもウンコには変わりないじゃねぇか!」と、またまた大爆笑……。 もう本当になんなのこのクラス!? 泣きそうになる私。 「もう……嫌だよ……」 小さく呟いてみる。でもそんな言葉はクラス中の笑いにかき消された。 ただ、一つだけ笑いにかき消されず、クラス全体に通る声があった。 「うるさい!人の名前で笑うんじゃない!」 その声の主は……。 「以前に私も名前でいじめられたことがある。お前らにはわからないかもしれんがな、名前でいじめられるのは辛いんだぞ!態度を改めなさい!」 担任の、マッツゥ・ンコ先生だった。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加