二.北の扉

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「さあ、行きましょう。これから試験の内容をお話しします」  静かな声に、さっと緊張が走る。  いよいよだ。 「はい!」  エヒテはザイと共に、イオロスの背を追った。  北の廊下の突き当たりには、大きな鈍色の扉があった。イオロスはその前で立ち止まり、エヒテを振り返る。 「さて、〈化石龍研究所〉がなんのために()るのかは、ご存知ですよね」  改まったその声に、背筋がすっと伸びた。エヒテは頷いて答える。 「一つは、化石龍の力が奪われないよう守ることです。もう一つは、ジュタの魔力を絶やさず維持することです」 「その通り。では、ジュタの魔力とは一体なんですか」 「ジュタは、自らの魔力によって六体の化石龍を創造しました。つまり化石龍らが持つ、自然を循環(めぐ)らせる力そのものが、ジュタの魔力です」  イオロスは満足そうにほほえんだ。 「そうです。けれど、どうやって化石龍を守るか、どうやって魔力を維持するか——その方法については、まだ明かされていないでしょう」  エヒテはこくりと頷いた。  研究所の試験では、エヒテが今説明したような基礎の情報だけ知っていれば、あとは実技を受けるのみだったのだ。  明かされていない、というより、極秘に守られている、という感じがする。  ——『その方法を知る術は一つしかない』——長老さまの言葉がふと脳裏に浮かんだ。  その術とは、化石龍研究員になること。ただひとつだ。  イオロスが、そっと鈍色の扉に手をかけた。 「試験を受ける前に、その方法をお教えします。……ですが、この秘密を知ることをゆるされているのは、研究員のみです。ですから、ここでの試験に合格しなかった場合——エヒテさん、あなたの命はありません」  漆黒の瞳が冷たく光った。 「あなたには選ぶ権利があります。辞退するか、命をかけて挑むか」
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