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「ふたりとも目を覚したか」
お腹に響く声が、頭上から降ってきた。その声だけで、ありとあらゆるものを支配してしまう、そんな牢乎さを宿した声。
あぁ。この声の主が、わたしたちの主人か。
その時、卵のような光がピリピリと震え始め、パリンっと一部が弾けた。その瞬間、光がベールのように宙を舞い、リボンのように解けて、この星の景色が色鮮やかに目の前に現れた。色鮮やか、とはいっても、濁りのない、刺すような鮮やかさではなく、どこか淀み、両手で口を覆いたくなるような色をしていた。
黒い衣を纏う彼は、繋ぐ手の力を強めながらわたしに近づき、その声の主を警戒するようにピリつく。
どうしてだろう。この感じ、初めてじゃない。くっつくようにそばに寄った彼の顔を見上げる。わたし、この人のとなり、知ってる。さっきまで一緒に眠っていた、とは違う感覚で。
その時、尾の長い虹色の鳥が炎を纏いながらわたしたちの前に降り立ち、人の姿に変わる。わたしたちと同じ姿。と同時に、さっきまでわたしたちが眠っていた卵のような光を守るようにトグロを巻いていたドラゴンたちが、今度は、鳥籠の綿材のようにわたしたちを囲う。まるで外からの侵入者を見張るように、視線はわたしたちの方には向いていない。
「久しぶりだな」
その虹色の鳥の彼は言う。わたしは首を傾げるも、となりの彼は静かに頷く。
「彼女は覚えていないのか」
虹色の鳥の彼と黒い衣を纏う彼は、知った仲のように、話しの続きのように会話を進めていく。彼らはすでに知った仲なのだろうか。「やっと起きたか、寝坊助め」。さっきの彼の言葉を思い出す。
そうか、わたしよりも先に目を覚していて、すでに彼らと知った仲になっているのかもしれない。チラリと、綿材となっているドラゴンの一頭がこちらに一瞬視線を向ける。
でも、「久しぶり」と言った。「彼女は覚えていないのか」とも。
彼女イコールわたしであるならば、わたしはこの虹色の鳥の彼と、過去に会ったことがあるのだろうか。わたしは今、この地に産声をあげたばかりだと思っているのだけれど、もしかして違うの?
彼は誰?
彼らは誰?
わたしたちの主人は、どこにいる。
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