アンジャベル

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アンジャベル

 Nさん、ストレスでメンタルシック外来だって。  いつもウチらのこと怒鳴って、わけわかんない言いがかりつけてたくせにどうして?  あの人、悪口と嫌がらせと怒鳴りつけが趣味みたいなもんでしょ、テレワーク主体になってからぶつける相手もいなくて、ストレスになったんじゃないかな。    だって、人事課にいる同期から聞いたもん。  みんなが着拒して、メールはスルーして、相手にしなくなってから一気に体調崩して起き上がれなくなったって。  いつも、言い返す声が頭の中で繰り返されて、家族にも暴力ふるうって。  意外と脆いんだね、ああいうタイプって。  どの口が言うのよ、黄色いカーネーションを自転車走らせて毎朝届けていたくせに。  率直に言えば角が立つから、奥ゆかしく伝えたまでですけど、なにか?  知っていてやるから、あんたって本当こわいねえ。  花言葉が軽蔑なんて、ばれた途端に錯乱して、警察騒ぎになったんだから。  私はただ、黄色が似合うと思って送っただけよ。  それにしても、やっぱりやりすぎかしら。  じゃあまた明日ね、またSkype会議しましょう。  給湯室の延長じゃない、楽しいけれど。  ではでは、ごきげんよう。お疲れさまでした。  私はぬいぐるみ片手にやってきた息子を抱き上げ、夕飯のリクエストを訊いた。  あんたが産む子供なんて大した子じゃない。産休なんて、絶対させないって言っていた口で泣き言を溢すなんて、想像しただろうか、あの人は。  こんなに可愛い子のどこが、大した子じゃないのかしら。  宝物で、アイドルに決まっているわ。  ママ、くすぐったい。  息子がキャッキャとはしゃいで、私に笑いかけた。  今夜は君が大好きな、ロールキャベツに決まりだよ。
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