インスタント!

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インスタント!

 最近はネットで何でも手に入る。  最新式のものほど、ネットで先行発売されている。  これは欲しいと思うものもあるが、中には一体なにに使うんだと思うような、キテレツなものも見かける。 **  彼女いない歴イコール年齢、独身貴族というには年を喰いすぎている同僚氏。彼の趣味はネットショッピング。  出不精で、買い物に行くのもおっくうらしい。  「買い物という点では、案外、俺の方がリア充より最先端を行っているかもしれんぞ」  と、彼は言う。  ちなみに俺は、彼が職場で心を許して喋ることができる、数少ない人間のひとりだ。  陰気で仕事もあまり芳しくない彼である。中には関わるのを面倒くさがって、挨拶すらしない奴もいる。  そんな彼にとって、休憩時間に給湯室で、俺と下らないことを喋る時間は、きっと貴重で有意義なひとときなんだろう。  彼女や友達と楽しくショッピングモール巡りをするよりも、部屋の中でネットショッピングをするほうが、時代を先取りしている。俺かっこいい、俺実はデキル男。そう思う事で自尊心を保とうとする彼。    (こういう奴っているよな)  鼻を膨らませながら、インスタントコーヒーを啜る同僚氏を眺めて俺は思う。  (人より得をしてることを、まるで自分の有能さの証みたいに思う奴)  色々思う所はあるが、俺はオトナだから、彼の自慢話を淡々と聞いてやる。  ある日、同僚氏は、実は最近ちょっと良い買い物をしてさあ、と、ひそひそ声で言ってきた。  いつものように、ふんふんほー、と、いい加減に聞いていたが、その買い物と言うのが、あまりにも時代を先取りしすぎていて、呆気にとられた。  「インスタント美女」  のびにのびた鼻の下が、コーヒーに浸かるんじゃないかと思う程、相好を崩して同僚氏は言う。  お湯を入れて三分が食べごろのカップ麺。まさにその感覚で、おうちで美女を堪能できるとか。  「ま、幻の美女なんだがね。それでも湯が冷めるまでの間、混浴気分を味わえるってのは……」  ちょっと凄いだろう?  同僚氏は得意そうに言うのだった。  インスタントの美女。ほんまかいな。  心の中では「嘘だろう」と疑いながら、表面では「凄いなー」と合わせておいた。 **
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