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「ねぇ、お姉ちゃん」
突然耳に届いた若い声に振り向くと小さな少女が自分を見上げている。
「どうしたの?迷子?」
私はしゃがみこんでその子の目線に合わせようとした。
しかし、上手くしゃがみ込めず尻もちをついてしまった。
「いたたた……何やってるんだろうね」
「大丈夫?」
お尻をさすりながら立ち上がろうとすれども立ち上がれないことに気づく。
焦りを感じていると少女は当たり前かのように言い放った。
「そりゃ無理だよお姉ちゃん」
最初はなんの事か分からなかった。
少女は淡々と告げた。
「━━━━だって足がないもん」
「え」
いつの間にか自分の足は何処にもなく、膝下当たりで無惨に誰かに一思いに切断されたような傷口があり、神経や血管が明るみになっていた。
そうと分かれば激しい痛みに襲われ嗚咽を漏らす。
「なん……で…… 」
血が吹き出す。倒れ込む。意識が朦朧としてゆく。痛い。いたい。イタイ。
こんな風になった記憶なんかない。
いつ誰にやられたのだろうか。
憎い。憎い。憎い。
すると少女がまるで全てを知るような口振りで言う。
「だってお姉ちゃんの心が黒いから。汚く黒くなればなる程その代償として自分の体の一部を神に差し出すんだよ。もうそうならないためにね」
女の子が血まみれの鎌を構えて私に微笑みかけていた。死を操る神がそこにいたのだ。
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