0.愚者

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0.愚者

 イルカが空を舞う。  水の弾ける音が軽快に響いた。  その音に乗るように水飛沫が降り掛かってくる。  隣に座る君は笑っていた。 「やっぱり水、かかっちゃうね」  前の席は濡れるって言たのに──そんな分かりきったことを、君はとても愉快そうに言う。  またイルカが羽ばたいた。  ざぶん。  先程よりも音が重く、水柱は空高く駆け上がる。  周囲からどっと歓声が沸き上がった。  君も負けじと劣らず歓呼する。  そんな様子を、ショーを尻目に眺めてみる。  無邪気な君の姿は、少しだけ、ほんの少しだけ、バカっぽく見えた。  そして気付けば──釣られて笑っている自分の姿が、君の瞳に映っていた。   
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