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2話
2年前―――
この国の王は、ある呪いが掛けられる。
幾千年も前の王が、悪魔と交わした契約を裏切ったとされ、以降この国の王は30になるまでには死ぬとされていた。
そして自分では死ねず、王が君臨している間は国が不幸になるという要らない得点つきで。
その呪いが王の血族だけに掛かると研究し突き詰めた俺は、逆らってやろうと無能な振りをして国民が革命を起こすのを待った。
だがそのような勇気あるものは現れず、幾年が経過してしまう。
それならいっそのこと、この国ごと滅ぼして、呪いを解いてやれと考えて勝てない戦を仕掛ける事にした。
だがここでひとつ問題が発生する。
隣国からの使徒であるスズキ君をどうするか、だ。
恐らく彼はスパイだろう。だが俺の幼馴染みで右腕のカジの恋人だ。
彼の反応からして、偽っている訳では無さそうだが、この場合はどうするべきか…
「スズキ君、少し君に話があるんだけど…今からいい?」
スズ「あ、はい。いいっすよ。」
カジの元にいたスズキ君を呼び寄せ、個室に入る。
「単刀直入に言うけれど…隣国に宣戦布告をしようと思う。
それにあたって、隣国出身の君に聞きたいことがあってね。」
スズ「…俺っすか…?」
「ああ。君はスパイだろう?だから、ここに残るか、国に戻るか決めて欲しいんだ。」
スズ「…全部、お見通しなんですね。」
「まあね。でも、カジ達には言ってないから安心して。言うつもりもないし。」
スズ「でも何で……」
「隣国は俺の国よりも領土が大きく、戦力も高い。
だから相手が負ける心配はないんだけど…念のため、ね。」
スズ「それじゃあ、まるでこの国を滅ぼしたいという風に聞こえなくもないですが。」
「……そうだね。滅ぼしたくないと言うと嘘になるかな。
まぁこの話は君にも隣国にも関係のない話だからね。気にしないで。
それで、どうする?」
スズ「………残りますよ。カジさんもいるし、貴方も心配ですからね。」
「…そっか。」
スズ「では、上に報告しておきますね。」
「よろしくね。あ、それと……
スズキ君は、カジの事が好き?」
スズ「…!!はい、あの人の事が、好きですよ。」
「ならいい。…アイツのこと、頼んだよ。」
話は以上だと、部屋から出る。
スズキ君の帰りを待っていたカジと、俺の体を見に来た保険医のサトウ。騎士団長のタナカが部屋に集まっていた。
「丁度良かった。皆に話したいことがあるんだ。
スズキ君にはもう話したんだけど…」
スズ「戦争するらしいですよ。隣国と。」
「えっ、俺のセリフ…」
カジ「っ、クク…流石オレの恋人っ。」
「おいこらカジ?一体何をいっているのかね?」
サト「ほらほら、落ち着いてくださいよ。戦争の話でしょう?カジさんも煽らないの。」
タナ「マジでお母さんやわぁ。
…そんで、戦争するって事は覚悟が決まったんやな。」
「あぁ。もう終わらせよう、この負の連鎖を。」
カジ「…そうだな。お前の願いが叶うまで、オレらがお前の傍に居てやるからな。」
その言葉に他の二人も頷き、スズキ君だけが知らないからとむくれている。
カジ「世の中には知らない方が良いことだってあるんだよ。
にしても、そんな可愛い顔してっと襲うぞ?」
スズ「っ!?くっそ…話逸らされた…」
タナ「気にせんといて。この話に足を踏み入れたら、本当の意味で戻れなくなるで。」
スズキ君には嘘を吐いたが、このメンバーは全員彼がスパイだと知っている。
俺は最初から知っていたが、彼らには伝えなかった。
どうせこの国は滅ぶのだから、何も問題はないと判断したのだ。
だが俺と違い皆優秀だから、直ぐに気がついた。
サト「では私は、薬や包帯等を準備してきますね。」
タナ「じゃあ僕は部下達に知らせてくる。反感を買うとは思うが、持ちこたえろよ?我が王。」
「勿論だよ。」
カジ「なら俺も…」
タナカと一緒に行こうとしたカジの背を掴む。
「おいカジ…?お前はまだ俺に提出する書類が残ってた筈だよねぇ。」
恐る恐る首を振り向かせたカジの顔は蒼白だった。
「悪いけど、スズキ君も手伝ってくれない?恋人に監視させたら、流石に働くだろうからね。」
スズ「はい。では行きますよ、サボり魔上司さん。」
カジ「スズキが冷たいぃぃ…」
「自業自得でしょ。では、解散!俺も書類しよ。」
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