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3話
銃声を聞いてやって来たのか、部屋に三人の男が入ってくる。
「あ、総統じゃないですかぁ。ってことは、この死体は王?」
総統と呼んだのは、赤い髪の兵士の菊地だった。
「へぇ…君が内通者だったんだ。」
菊「そうですよぉ、秘書様。まあ下っ端に潜入してたんで、秘書様の目に留まることはなかったですけどね。」
「そんなことないよ。菊地春君でしょ?」
「だから言ったやん。泊は皆の名前を覚えてるんだよ。……ふー。」
「おい青。ここで煙草吸うなよ。」
青「ええやん別にぃ。ほら、今までこき使っていた人の死体の前で煙草吸うっていう優越感を楽しんでるんだよ。
というかハルちゃんが内通者だったんや。全然気づかへんかった。」
「あ、因みに僕もっすよ。」
「え、秋山君も!?」
青「……俺、内通者に挟まれてたんやな…」
俺の友人である青の両隣にいた二人が内通者だったとは。
秋「青さんが王のことを嫌いなのは知ってたんで。」
もしかして、この国の情報を漏らしていたのは青なのでは……
恐ろしい考えが頭を過った。
彼は口が軽い所があるから、有り得なくはない。
菊「青が色々と口を滑らせてくれたお陰で、助かったよ。」
青「あ゛ぁー、やっぱり俺かぁ……」
「お前はすぐ人を信用する癖治した方がいいと思う。」
青「それ自分でも思ってるんよ?そう簡単にいかへんねん。」
菊「でもそのお陰で俺は青と付き合えたんだし。
俺はそういうところすきだよ?あーお。」
青「っ、急に言われると心臓に悪いって…」
「いちゃつくなそこのカップル。」
青「うるせぇ、童貞は黙ってろ。」
総「へぇ、泊は童貞なのか。」
総統の呟いた言葉を聞いたとき、背すじに悪寒が走った。
菊「あーあ。秘書様終わったな。」
秋「これは…そうっすねぇ。総統に目をつけられて逃げ切れた人はいませんから。」
「えぇ……」
菊「因みに処女は?」
「えっ、処女…ではないけど……」
青「泊は処女ちゃうよな。あぁ、でも相手は死んどるで?」
「お前…っ!これだから口が軽いって言われるんだよ!!」
青「え?………ぁ。」
青の言葉で察したのだろう。皆チラリと地面の死体に目を向けた。
総「よくお前、恋人を殺せたな……」
「いや、別に恋人違うんで。」
青「泊は王のお気にいりやったからね。お前は嫌いなんやろ?」
「まぁ、そうだけど…」
総「それなら無理矢理か。……俺が殺しておけばよかった。」
「もう終わったことですし、いいじゃないですか。」
菊地君が言っていた終わったとは、もしかしてそういう意味なのか…?
あの王よりはいい人そうだから、別に悪い気はしないけど、俺は男に好かれる運命なのか。
総「男にしては綺麗な顔立ちをしている上に優秀だからコレの気持ちは分からなくもない。」
「……聞かない方がいい情報を聞いてしまった気がする。」
菊「頑張ってくださいねー、秘書様。」
青「取り敢えずこの死体片付けようや。いつまでコレの前で喋ってるん?」
「そうだね、血の臭いも染み付くし。片付けようか。」
先ずは片付けからだ。そのあとに国民に敗北宣言をしなければならない。
秘書という仕事は変わらないだろうが、この国よりも大きいから仕事量は増える筈だ。
だが、仕事をくれたからには期待以上の事をしたい。
総「これが終わったら、俺らの勝利宣言をする。それにはお前も参加しろ。」
「ええ、分かっています。愚王に代わって、俺が代表として敗北宣言をしなければいけませんからね。」
総「それと、俺のモンになる覚悟もしておけよ。」
「はい。仕事には手は抜かないつもりですよ。」
青「…これは、完全に勘違いしてるね。
でも、報告書の提出期限守らんかった時の泊は怖いから気を付けてな~。」
菊「うげ、まじかよ。」
「何だって?」
「「なんでもないです!」」
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