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4話
母国が戦争に負けて、1年が経つ。
俺の役職は変わらず秘書のため、仕事内容はおおよそ同じだ。
母国と比べると数倍はこの国が大きいため、必然的にも仕事量は多くなるが、悪くても三徹夜くらいなので、身体的にも一年前よりかは楽になった。
愚王が仕事を貯めた時は五徹くらいは普通だったから、矢張り環境は良くなっている。
新しい俺の主は愚王と違って自分の仕事は自分で片付けてくれる上に、他の皆にも声かけをしてくれる。
毎日のように口説いてくるのが玉に瑕だが。
公私混同せずに仕事時以外でやるものだからたちが悪い。
押し負けた気がして嫌ではあるが、絆されてきている事も事実だ。
こんな話を頭のなかで繰り広げている間に、仕事の支度は整った。
最後に少し髪を整え、帽子を被って部屋から出る。
朝の仕事は、まず低血圧の総統を起こすことから始まる。
いつも通りドアをノックし開けると、そこにはベッドで寝ている総統と、その傍で全裸の女性がいた。
「どちら様ですか。ここは俺以外立ち入ることを禁じられている筈ですが。」
「わ、私…昨日総統様に連れられて……」
「嘘ですね。昨日の夜は直ぐにお休みになられたので。アルコールも入っていなかった筈ですよ。
それで、どこの内通者ですか。」
総「…ん、泊?
あれ、この女誰だ?」
「どこかの内通者か、貴方と既成事実を作ろうとしていた女性ですよ。」
「違っ…!忘れたんですか!?昨日あんなに……っ」
総「悪いが、俺は女は好きじゃない。それに、俺はコイツと付き合っているからな。
別の人間を抱くような真似はしない。」
今だけは、そういうことにしておこう。
話がややこしくならないようにする為だ。
「恐らく、見張りの二人とグルでしょう。
捕まえますか?それとも、殺しますか?」
総「殺せ、と言いたいところだが、今はまだ駄目だ。」
会話をしている間に女性を縛り上げる。
無論、女性だからといって容赦はせずにそのまま縛り上げた。
「一応、姫野さんを呼びましょうか。あの人なら女性一人くらいは運べるでしょうから。」
姫野さんは、女性軍人の一人でとても怪力だ。
それを言うと怒られるが、彼女は判断力もあり、軍隊長となった女性なので、「こういうこと」を頼んでいるのだ。
つまりはこういう風に女性が紛れ込むことが度々あるということだ。
電話で彼女を呼び出すと、またですかと溜め息をつかれた。
「総統は顔も良い上にカリスマ性がありますからね。女性に人気なのは納得ですよ。」
「ですが総統は今、貴方と付き合っているのでしょう?気まずくはないですか?」
「…どこからの情報ですか。付き合っていませんよ。」
「そうなんですか?あれだけずっと傍にいるのに、まだなんですね……」
総「だが、お前も俺の事が好きだろう?」
「っ……」
「では、私はこの女性を連れていきますね。
外の二人も事情聴取の為に捕らえていますよ。」
総「よくやった、助かる。」
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