天使になれなかった彼

悪魔の思惑

天界とは神とその使い、天使が住まう美しい都だ。
だが、人間どもが崇めるような綺麗な場所ではない。
事実、今回の人間の国の戦争は、天使が引き起こしたものだ。
ただ、青年を手に入れる為だけに。

彼は人間にしては珍しい、純粋な心の持主だった。
その上、死んだ時天使になることができる条件を全て満たしていた。
その条件とは、こうだ。

Ⅰ、嘘をついたことが１度もない
Ⅱ、酒を飲んだ事がない
Ⅲ、カジノ等の賭けをしたことがない
Ⅳ、性行為・自慰をしたことがない
Ⅴ、人を恨む、もしくは恨まれた事がない
Ⅵ、神を信仰している者
Ⅶ、悪魔との関わりが一切無い
Ⅷ、上位全てに当てはまり、二十歳まで生きてきた者

彼が我と契約をせずに、天使の思惑通りに死ねば、彼は天使へと生まれ変わっていただろう。
彼が条件を全て満たしているのならば、どれかひとつを壊せばいい。
偶然にも彼は我を召喚した。彼が愛する王の為だけに。
だから我は、彼を手に入れる為に国に奇跡をもたらした。
彼に会う以前に契約した隣国の人間も、その為に裏切った。
そして、二度と彼に手を出すことが出来ないように王と国に呪いを掛けた。
人間なんぞに敵となる者など存在しないが、帝国の王を洗脳し国に戦を仕掛けさせた。

これで彼を狙う敵は全て無くなった。
一目見た時からその清らかな魂に魅了された我は、ようやく彼を手に入れる事ができたのだ。

――End――