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彼の手が私の胸元に伸び、身体をビクリと震わせた瞬間。
ブブブブブ・・・。
市谷さんのスマホが、テーブルの上で着信を知らせた。
「・・・。」
「・・・。」
なんともいえない雰囲気で、二人でそのまま動きを止める。
(こういう展開、多いよね・・・。)
チラリと市谷さんの顔を窺うと、予想通り、恐ろしく苛立った表情。
「桐島だったら、出ない。」
「ええっ!?」
そう言いながら画面を確認した市谷さんは、ため息をついて通話ボタンを指で押す。
「・・・はい、おつかれさまです。」
かしこまって話し出す市谷さん。
どうやら、電話の相手は龍平くんではないらしい。
「・・・はい・・・はい・・・それは・・・。」
込み入った話になると思ったのか、市谷さんは電話をしながら手で「ごめん」のポーズをとると、寝室の中へと入っていく。
しばらくぼーっと待つものの、一向に寝室のドアが開く気配はない。
(長くなりそうな感じだよね・・・。)
そう判断した私は、自分のスマホを取り出して、最近お気に入りのパズルゲームを起動する。
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