1 強引な紹介

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「えっ!?本当ですか?ハイ!ぜひ!」 「ふふっ、じゃあ、がんばってね。」 「はい!」 勢いよく返事をして、やった!と、胸の前で小さく拳を握る。 私、倉木里佳は、ここ、カフェ「7 luxe(セブンリュクス)」で働き始めて約半年。 現在パートで働いている私にとって、それはとてもうれしい申し出だった。 「7 luxe 」は、森川吉人さん、伊佐子さん夫婦が28歳のときにオープンしたカフェで、今年でめでたく10周年を迎える。 繁華街の路地裏にある、いわゆる「隠れ家的なおしゃれカフェ」だけれど、口コミで評判を呼び、男女問わずさまざまな年齢層のお客さんが訪れる。 ファミレスほどの広さはないけれど、こじんまりと言うにはゆったりとしたスペースと客席数で、ホールとキッチン合わせて、毎日4〜6名のスタッフがシフト制で働いている。 私はホールの担当だけれど、月曜日の午前中だけ、キッチンスタッフとなってスコーンを焼く。 というのも、以前、差し入れに持って行った私作のスコーンの評判があまりにもよくて、「お店に出してみたら」という吉人さんのひと声で、週に一度だけ、商品としてお店の焼き菓子と一緒に、デザートコーナーに並べてもらえることになったのだ。 家政学部出身で、栄養士の免許も持っている私。 元々料理は好きだったけれど、こんな風に直接仕事につながるとは、思ってもみなかった。
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