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「慶太、そろそろ起きなさい。」
まだ夢の中にいたい…。楽しかった思い出に浸りたい、辛い思いをしたくない。
「慶太!」
「はい…おはようございます。」
無視したらいいのに、それができない。
あの低い声に逆らえない。逃げられないんだ。
「おはよう。今日は家にいなさい。」
「海斗は…?」
「海斗は学校に必ず行くように伝えている。何か話したいことがあるなら朝食の時にでも言いなさい。」
「…はい。」
自室に戻って服を着替える。1日家にいるなら適当でいいかとラフな服を選んだ。
「遅くなってごめんなさい。」
「さぁ、慶太も来たことだし食べようか。」
「「いただきます。」」
「慶太、家にいるからといってその服はダメだと思うが。天野家だと自覚を持ちなさいといつも言ってるつもりだが?」
「ごめんなさい。後で着替えます。」
「海斗、慶太に服を選んであげなさい。」
「はい。」
天野家の自覚も何も、家に閉じ込められているだけなのに。悲観的になってしまう自分も嫌いだ。
「じゃ、私は仕事に行ってくるよ。」
「ん…っ。」
まだ食べ終わっていないのに深いキスで混乱してしまう。
いい子で待っているんだよ。耳元の一言と頭を撫でる手は優しさなのか、心がきゅっとなるのは俺がおかしいからなのか…。
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