本編

30/86
前へ
/91ページ
次へ
「早く食べ終わってくれないと俺遅刻するんだけど?」 「ごっ、ごめんなさい…。もう食べ終わった。」 「行くぞ。」 手を引かれて廊下を歩く。昔は遊びに行くたびに海斗が手を引いてくれてたっけ。なんて思いながら…。 「何?俺といるのに考え事?」 「昔のこと…。」 「はぁ…。」 わざと出されたであろう、ため息は全身を釘で打たれたかのような衝撃だ。 「慶太がいちいち最低な両親の記憶に浸るせいで俺との時間が減ってること気が付かないわけ?ほんとに頭の中ふわふわだな笑」 「そんなことない!」 「はっ?」 「あっ…違う…ごめん。ごめんなさい…。」 間違ってない。海斗は間違っていない。俺は両親に捨てられた。どちらにも連れて行ってもらえなかった。なのに…。涙が溢れてくる。 「やっぱり慶太には泣いた顔が合ってるな。」 「んっ!」 涙を舐め取られたことにも驚いたが、背中をさする手にも。 「海斗…?」
/91ページ

最初のコメントを投稿しよう!

287人が本棚に入れています
本棚に追加