プロローグ

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プロローグ

子どもの泣き叫ぶ声が響いている。 「待って、待ってよ」 少年は大声で喚くが、男たちふたりに両腕を掴まれ無理やり引きずられていく。 そんな少年の視線の先にはひとりの女がいた。 金髪の見目麗しい女だが、少年を見る目は氷のように冷ややかで温度を感じない。 しかし少年は、彼女に救いを求めるように手を伸ばし続ける。 「お願いだ母さん、ボクを置いていかないで」 だが無情にも少年の目の前で鉄製のドアが閉じられ、視界から母親の姿は完全に消えた。 それでも諦めきれないように少年の茶色い瞳はドアを見つめ続ける。 その背中に、 「いい加減冷静になりたまえ、エレミエフ博士」 年老いた男の声が降りかかる。 「キミの頭脳は人類の宝なのだ。ここにいる限り不自由はない。研究にいそしみたまえ」 少年は涙を振り切って、茶色い瞳をキツくすがめて男を睨み付けた。 そんな少年の抵抗も、男にはそよふく風のごとく無力で、男は、 「キミは母親に捨てられたのだ。売られたのだ。その事実を潔く認めて、今後は私と共に来るがいい」
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