1 デートの約束

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龍一の剣呑な空気から逃れるように、 「まあ、続きは水族館に入ってからにしようぜ」 高広は購入済みのチケットをヒラリとみせ、 「楽しみにしてたんだからな」 踵をかえす。 入り口に向かう背後で、 「ふざけるな」 カシャンと銃身をスライドさせる音。 これ以上ふざけていると、本当に龍一に撃たれそうだ。 仕方なく両腕を軽くあげホールドアップしながら、 「慌てんなよ。楽しみにしてたのは俺じゃなく、あっち」 顎だけ傾けてみせる。 高広が示す先には、水族館の館内地図を夢中で眺めている少年の姿があった。 薄茶の髪に茶色い瞳。 幼いながらも大変な美少年だ。 「な」 高広は顎をあげて頭から振り返る。 「あんたの息子だろう」 断じてない! と龍一が一刀両断に否定してみせることは簡単だ。 だが組織に属する者として、あらゆる自身のデータを取られた記憶がある。 その一部から、龍一の遺伝子を継ぐ者が生み出されている可能性は、――ゼロではない。 「DNA鑑定は」 龍一は銃を懐に戻しながら小声で尋ねる。 高広はニカッと笑った。 「まっ、続きは中で話そうぜ」 もう一度、水族館のチケットを扇のように振ってみせた。
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