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龍一の背中からおずおずと出てきたイリヤは、
「うん、研究施設としては、ここは少し物足りないから……」
高広に向かって申し訳なさそうに言う。
高広はケッと悪態をつくと、
「国家プロジェクトがかかった予算と一般家庭を一緒にしてくれんなよ」
そして、そんな風に当り前のように会話しているイリヤに、ユーコフ博士は目を丸くしている。
「生きているとは聞いてはいたが、……本当だったのか」
ここでやっと、イリヤはユーコフ博士に目を向けた。
ずっとイリヤの保護者で、イリヤの養父代わりだった人物。
ほんのひと月前まで、ユーコフ博士の存在は偉大で、ロシアのラボでは絶対君主だった。
逆らうことなど、考えられやしない。
それなのに、久しぶりに会ったユーコフ博士は、何故だか急に体がしぼんでしまったように見えた。
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