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いや、そうではない。
イリヤは、同じ玄関に立つ龍一と高広を見上げる。
このふたりの存在が大きすぎるのだ。
体格は元より、器もその思考も、ユーコフ博士を小さく見せてしまうほど、常人には計り知れないほど大きな男たち。
あの日龍一は、イリヤの頭の皮一枚を狙って撃った。
もちろん、皮が一枚裂けただけでたいした傷ではなく、後遺症も残らない(ただししばらくの間禿げたが)。
ついでに高広が座っていたソファーには、いつの間にか血のりが仕込まれていて、イリヤが倒れたと同時にそれが破れ、イリヤの頭は血まみれになった。
そんな仕込みはイリヤも知らない。
もちろん高広と龍一が打ち合わせする時間もなかった。
ソファーに広がった大量の血のりが、ユーコフ博士の度肝を抜き、ユーコフ博士のそんな反応がイリヤの死に信憑性をもたせた。
まさか、こんな事態を予測して準備していた高広にも、そこまで見越してイリヤを撃った龍一にも、イリヤはただただ驚かされるばかりだ。
いったいどれだけの修羅場をくぐってくれば、これほど人を信じない男たちが出来あがるのだろうか。
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