9 デートはおウチに帰るまで

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そう、完全に自由になったはずなのに、 「なんで今さら帰るんだよ」 高広は唇を尖らせる。 研究施設に不満があるとイリヤは言うが、そんなもの本当の理由だとは思えない。 イリヤは一度、ロシアに捨てられたのだ。 高広に問われ、イリヤは言葉を探して、そして困ったように龍一を見上げる。 龍一は、イリヤを認めるように、うなずいてみせる。 イリヤは、 「いつまでも迷惑をかけられないから」 「メーワクなんかじゃねーよ」 高広は声を荒げる。 「ガキのくせに何いらん気ぃなんか使ってんだよ」 それから、 「誰がメーワクだなんて言った? そいつか?」 龍一を指さす。 「メシのひとつも用意しねぇ。このひと月、イリヤの様子も見に来なかった。そんなヤツの言うことなんか聞く必要はねぇんだ」 イリヤはあれからずっと高広の庇護の元にいた。 以前にも誰かを匿ったことがあるという、地下の隠し部屋に隠れていたのだ。 その部屋は高広の研究室にもなっていて、イリヤが必要とする研究機器にも不足はない。 だからイリヤが家を出て行く理由なんかどこにもないのだ。
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