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「なんでお金がないのか?今日はじっくり話し合おうや」
「そんな話ししたところで、何か変わるのか?」
「変わるかどうかは重要じゃない…」
「重要なのは、いかに酒のサカナになるか!だろ〜」
「その通〜り」
声を合わせた酔っ払いどもは、もうかれこれ、四時間近く酒を飲んでいる。正常な思考回路の残っている者はここにはいない。
「よしッ、じゃあ〜まず、俺から話すからな〜」
「いいぞー!待ってましたー」
この類の合いの手をするのは、大概お調子者である。
「聞かせてよ〜、早く聞かせてよ〜」
こういう事をいう奴ほど、話しの内容をきちんと聞いていない。
「ちょっとトイレ行ってくるわ…」
四人もいると、代わる代わる用を足しに行かなくてはならない。
「まあ聞いてくださいよ〜。週4とか5でバイトに行ってるじゃないですか〜。なのに、給料は激安でしょ〜。家賃と週末に酒飲んだら、余裕で終わるっつーの」
「わかるわ〜、めっちゃわかる」
「店長は禿かけてて、口も臭いしな〜」
「うぅ〜、トイレ寒ぅ〜」
季節は早春。古びたアパートは外からのすきま風で、まだまだ寒い。風呂場とトイレに至っては、外となんら変わらない。
「お前がトイレなんか行くから、俺も行きたくなったわ〜。話しの途中なのによ〜」
「我慢しろ〜、我慢」
「そこの空き缶にしろよ」
「あッ、おれ、ションベン流してねーわ!ハッハッハ」
「きったねえなー」という声がそれぞれから上がり、「それじゃ、乾〜杯」と今日、何度目かの乾杯が交わされた。
ここにいる四人の週末は、大体決まってこうである。外で飲むこともたまにはあるが、外で飲むと金がかかるため、誰かの家に集まって安酒とツマミを持ち寄り、酒盛りをするのだ。酒癖はけっして良いとは言えないが、中身は割と真面目な青年たちである。
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