誇り高き花

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2XXX年の地球で、ある研究者が極秘でプロジェクトを進めている。研究者は男と女の二人だけ。極秘のプロジェクトの内容は誰にも知らされていない。温暖な気候で過ごしやすい孤島に建てられた研究所で朝から晩まで研究を続けている。ただただ画期的な研究であり、この研究が成功した暁には人類と地球の両方を救うだろうと、男の研究者は豪語していた。 その研究がいつ完成するのか誰にもわからなかった。 「リイネ、あとはよろしくね。僕は少し休むよ」 「ええ、ラキは少し休んで。明日には研究を正式に発表するんでしょう?」 無精ひげを生やし、ぼさぼさになった髪の毛を右手でなでつけて、ラキは子供のように笑った。寝食を共にし研究を進めてきたリイネとは同級生であり同僚だ。ラキの類まれなる頭脳はすぐさま、世界の中枢が欲しがった。それこそ家族を人質にとられるような脅し文句と共に、ラキは自らの頭脳を提供し世界の中枢を喜ばせてきた。ラキがこうして好きに研究をさせてもらえるのは、小型爆弾を開発した報酬でもある。戦争を防ぐための武器を開発するためどこの国も忙しい。この研究は必ず役に立つと説得し、研究が終わりさえすればまた望み通りの武器をつくると説き伏せた。 ラキの良き理解者であるリイネが、一緒にこの研究施設にこもってから4年。とうとう完成したものは、薔薇に似た花だった。赤黒い色は、高級なホテルにあるレッドカーペットのようにも見える。黒々とした血の色にも似て美しかった。忙しい日々を過ごしていたはずなのに、この研究の設計図をいつどうやって描いたのかリイネにもわからない。リイネだって優秀な研究者だ。決してラキに引けは取らない。だがラキは天才という言葉からはみ出るくらい優秀だった。
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