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ラキが仮眠室に行くのを見送った後、リイネは咲いたばかりの花に目を向けた。この花は地球を救うかもしれないが人類は救わない。人類のみを滅亡させる芳香を放つ毒の花だった。植物や土壌、動物には影響を及ぼさない。この花の蕾が開くころ、そばにいる人が死に始めるように設計されている。ただし花特有の甘い香りは一切しない。無臭であるために花だと思わずレプリカだと勘違いする人もいるだろう。
リイネが花のそばにいても無事なのは、特殊なガラスケースの中で咲き誇っているからだった。リイネはガラスケースに手をかける。これからしようとすることはラキを裏切ることだった。そしてラキを必ず救うことにもなると信じていた。
殺りく兵器ばかり作らされてきたラキは、いつの頃からか人に対して失望するようになった。もとは心優しい少年で動物も地植物も大好きだった。それは今も変わらない。きっと動植物を愛するあまり、人へ心を開くのをやめてしまったのだ。明日の記者会見でこの花をガラスケースから出すことに決めている。するとどうなるか、その場でばたばた人が死んでいくという計画なのだ。花に近寄ることは誰もできない。空からミサイルを落としても、この研究施設には他にも同じ花がある。
そうなる前にリイネは何としても止めなければと思っていた。同じ研究者として、この花を生み出した責任を取るために。
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