2人が本棚に入れています
本棚に追加
「花言葉は、“希望"。生命の誕生には希望がなくてはね」
たとえ茨の道を歩もうとも、胸から消して去って良いものではないはずだ。リイネは息をとめてガラスケースから花を取り出す。大きく息を吐きだして鼻の近くにもっていく。
「私の献花になってくれてありがとう」
リイネが息を吸っても花の香りはしない。操り人形の糸が切れるように、リイネはその場に倒れる。しっかりと花を胸に抱いたままこと切れた。
その夜、突如として燃え上がった炎は、孤島の半分を吹き飛ばした。生存者は確認できず研究施設の残骸も何も残っていない。もちろん研究データもすべてなかった。ただリイネとラキの二人が死亡した事実だけが、世間に公表され彼らの多大なる功績を称えられた。そう、彼らの研究は誰にも知られないまま、この世から姿を消したのだ。
数十年経ったあと、孤島には草木が生え始める。やわらかな草と野の花が顔を出し、若木がひょろりと顔を出して孤島を緑に染めていく。そして、やわらかい緑の草の合間で、刺のない薔薇のような花が咲いていた。その薔薇の花の色は、やさしいピンク色をしていた。
最初のコメントを投稿しよう!