やさしい居場所 1

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 今日はいつも降りる駅よりも手前で降りた、美味しいパンケーキ屋ができたと聞いて、居てもたっても居られなくなって食べに来た。プレーンのホットケーキは外はサクサク、中はふんわり焼き上がっており、口コミ通り美味しかった、一緒に頼んだコーヒーもほどよい酸味とフルーティな味わいがあり美味しかった、また今度は別の果物がたくさんのったパンケーキを食べに来るのもいいかもしれない、そう思った。沈みかけていた気分は少し上向き、今まで忙しかった分、少しゆっくりしてみるのもいいかもしれないと思った。そんなことを考えながら、帰り道を歩いていると、暗闇に浮かぶ看板が一つあった。  よく見てみると 「薬師堂薬局、ここを入ってすぐ。アルバイトも募集中」  と書いてあった。  そういえば、家に常備していた風邪薬がなくなっていたことに気がつく。ちょうど今は春から初夏に季節が変わる頃、季節の変わり目によく風邪を引くので風邪薬は手放せない。ちょうどよかった買って帰ろう。そう思って細い路地へ足を踏み入れた。  その瞬間だろうか、周りを囲む空気が変わった。何というか今まで生気に満ちていたのが無機質な何かに変わった、そんな感じだ。やばいところに足を踏み入れた、と思って引き返そうかと思って振り向いたが、元来た道はもうなかった。冷や汗が背中をつたう。少し離れたところに明かりがともる店が一見、おそらく件の店だろう。そこまで行ったら此所が何かわかる様な気がして、とりあえずその店に行ってみようと急ぎ足で向かった。
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