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一昔前の薬屋さんといったらいいだろうか、店の前に某製薬会社のケ●リンが鎮座していた。立て付けの悪い引き戸をガラガラと開けて中をのぞいてみる。人の気配はなかった。
「すみません、誰かいますか?」
声をかけてみるが、誰も出てくる気配はない。
「すみませ~ん。」
今度はもう少し声を大きくして呼んでみる。そうすると店の奥から人が出てくる気配がした
「はいはい、どなたですかこんな時間に訪ねてくるのは・・・」
そう言いながら奥から出てきたのはこの店の主だろうか、開いているかどうかわからない位に細い狐目で、ヨレヨレの着古したジャージの上下、片手にはタバコ、どう見てもくたびれたサラリーマンの普段の姿にしか見えない。この人大丈夫だろうかと一抹の不安を抱えていると、私の姿を見たその目がわずかに開いて嘆息してこう言った
「おや人間のお客さんは久しぶりですね。いらっしゃいませ。何かお困りのことでもおありですか?それにしてもお客さん、珍しいものを憑けていますね、それのおかげで今まで無事に過ごせていたわけだ。それがなかったらとっくに喰われていますよ。」
初対面で訳のわからないことを言われて、面食らう
「私はただ、看板を見て風邪薬が欲しくて此所にきたの。それにしてもあなた私が奇妙なものを見るのがわかるの?」
「わかりますよ。」
こともなげ言われて、呆然とする。今まで同類というか、同じように見える人と家族以外で出会ったことがなかった。
「此所は普通の人は見ることも来ることもかなわない場所、あるいは何か悩み事を抱えてくる人が訪れる場所、さあ、君はどんな悩み事があるのですか。」
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