やさしい居場所 1

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「では今後の事をお話ししましょうか。そういえばお名前をお聞きしていませんでしたね。」 「私の名前は、桐野勇(きりの いさみ)です。よろしくお願いします。」  ぺこりとお辞儀をすると、同時に頭にずっしりとした重み、顔が上げられない。 「よう!店主。いつものをもらいに来たぜ!」 「ああ、厄除け地蔵様いらっしゃいませ。いつもの薬ですね、少々お待ちを。」  と、店長は奥へ入ってしまった。残されたのは私と頭の上にのっている厄除け地蔵とか言うものだ。なんせ、頭が重くて痛い、早くどいて欲しい。すると、地蔵様が言った。 「おまえ人間だな、しかも変わった人間だ。ここに来る事ができるなんて相当だな、何か困っている事でもあるんかね、そんな事なら店長に頼んだらさっさと片付けてくれるぜ。まともな人間は長くここに居るのは危険だからな。」 「私は、ここでアルバイトをすることになったの。危険というのは何故?」  よっと、という風にやっと頭から降りてくれた地蔵様に視線を合わせる様にかがんで恐る恐る聞く。 「そりゃ、ここは異形のものが集う場所。下手したら負の感情の塊の様な物も来る、うかつに近づけば乗っ取られるよ。」  そんな恐ろしい事は初めて知った。何故に早く言ってくれなかった店主よ・・・・・・。 「はいはい、せっかく手に入れたバイトなんだからそんなに怖がらせないでよ、地蔵様。」 「本当の事だろうが、このキツネめ。」 「まあ、その子は大丈夫だよ。優秀な守りが憑いているからね。」  地蔵様がじいっと私を上から下までなめる様に見つめる。そして合点がいった様に言った。 「なるほどね、これなら下手な雑魚はよれないだろうね。何故憑いているのかはわからないが、感謝する事だね。何で悩んでいるのかはわからないが、ここを休憩所と思ってゆっくりと答えを探すのも良いとわしは思うぞ。では邪魔したな、お嬢さんもまたね。」  地蔵様は店主から何かを受け取り帰って行った。
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