やさしい居場所 1

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 それが一ヶ月前の話だ。  それからは、妖に会う度にびっくりしたり、何が欲しいのか何をして欲しいのかわからないしで、店長に助けを求めてばかりいた。何も言わずに手を差し出されてもどうして欲しいかわからない。大物が来たときはぽっかりと開けた口に飲み込まれそうになった。あの口の奥の闇はそこまでも続いていそうで怖かった。  そんなこんなで、未だに慣れない事は多いが、なんとか店番をこなせる様にはなった。  先ほども述べた様に、いつもは昼まで寝る勢いの店長が私の出勤時間と同時くらいに起き出してきたのは、どうやらお客さんがいらっしゃる様だ。昨日は特にそんな事は言ってなかった、果たしてどんな方なんだろう。 「こんにちは。」  カラカラと音を立てて引き戸が開けられる。そこには20代のOL風のお姉さんが立っていた。 「薬師堂薬局はここですか。」  私は慌てて返事をする 「はい、そうですが。何かご用ですか?初めて来られる方でしょうか?」 「ああ、よかった。そうです、初めてです。」 「そうなんですね、店長~お願いします。」  ご新規さんはまだ私の手には負えないので、店長に任せる事にする。一応待合室の様な物があるので、そこの椅子に座ってもらう。店長が正面に座ると同時に女性はぽつりぽつりと話し始めた。 「実は、最近悪夢にうなされているのです。それも、最近の出来事ではなしにずっとずっと昔の戦国時代の戦場の夢とか、飢饉で人がたくさん死んでいく夢です。焼かれる様に熱くて、痛くてとにかく悲しい夢です。睡眠薬を飲んでもよくならなくて。こんな事他の誰かに言う訳にもいかずにどうしようかと思っていたら、訳のわからない道に迷い込んで、やっと貴方達のいるここにたどり着いたの。この悪夢どうにかならないでしょうか?こんな事あなた方に言っても仕方がない事かもしれないけど、本当に困っているの。」
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