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確信した私は思わず彼の後をつけていた。
運よく人通りの多い道ばかりだったので、隠れたりすることなく後をつけることができた。彼は駅へ向かうとこだったらしく、切符売り場に駆け寄り――そこで、着信を告げる音が彼のポケットから発せられた。
「はい、もしもしー」
きたあああああああああああ!
私の心臓は歓喜で震えた。出来る限り傍で聞こうと、私は大胆にも彼の隣の切符売り場に立ち切符を買う素振りをする。横目で彼の顔を覗くと、マスクで顔はよく見えないが、そもそも彼は配信の際マスク姿だ。いつも化粧バッチリの目元で画面に映るが――化粧では隠しきれない彼特有の目の特徴がある。
電話で何気ない会話をする彼の声が聞き間違えでないこと、目が記憶通りの特徴的な形をしていたこと。それを確認した私は、彼が気づく前にその場を離れた。もっと声を聞いていたいという欲は溢れんばかりにあったが、今はそれどころじゃない。
にやけすぎた顔がバレるのはよくないから
「本物……!」
しかも急いでどこかに向かっていた、ということは彼は今いる場の近所に住んでいる可能性が高いということ。
「マジか」
信じられない幸運。
推しが近くに住んでいるなんて奇跡あるだろうか?
こんなの、こんなの……!
「手に入れれるってことやぁん……っ」
恍惚とした気持ちで表情を蕩けさせている私の目は、漫画の世界であればハートが舞い散る瞳だったことであるだろう。
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