推しがいた

1/2
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ

推しがいた

「あ、すんません」  その一言に、私の全細胞の時が止まった。   「大丈夫ですか?」  再び声をかけられて、私は息を吹きかえす。 「はい……」  何とか絞り出した声はかすれていて、自分でもちゃんと言葉を発せたかどうかわからなかった。  声をかけてくれた人物は、肩がぶつかった際に私が落としたスマホを拾い上げると「急いでて、ちゃんと周り見えてへんかったわ。ごめんな」そう言って私に手渡してくれ「ほなっ」と足早に去った。  ――間違いない  手渡されたスマホを力いっぱい握りしめ、私の身体を巡る血液が喜びで震えた。  ――あの声は 「私の、推しだ」
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!