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「浅沼涼子です。私は、父の事業が失敗して、多額の借金があって……母は心を病んで自殺してしまいました……父も体を壊して入院していて……」
よくある話だ。
安っぽいドラマでもよく聞く。
私と同じように円を描くように並べられた椅子に座っている彼らは真剣な顔をしている。
私の話が終わると隣に座っていた中学生くらいの少年が話し始めた。
「佐藤和也です。えっと、僕は両親が小さい頃に交通事故で死んじゃって……」
男7人、女5人、合わせて12人。
いずれも初対面の私達が顔を合わせて身の上話をしているのには理由がある。
ゲームの招待状が来たのだ。命をかけて挑むゲーム、時には協力し、時には裏切る。無事に生き残れば億のつく賞金が出る。
それこそよくありがちな話だ。安っぽいドラマでも見かけるような。
今はそれぞれ自己紹介がてら参加するに至った自分の話をしているところだ。
しかし、私は嘘をついた。
初めてではないのだ。
以前にも一度別のゲームに参加し、勝ち抜き、お金を手に入れた。
借金を返し、入院費も払ったが、父は死んでしまった。
残ったお金でありとあらゆる贅を尽くした結果、再び金に困るようになっていた。
お金がない。
お金がない。
なんて惨めなんだろうか。
金が欲しい。
お金が欲しい。
満たされるだけの財産が。
大丈夫、私は要領を得てる。誰よりもうまく立ち回れる。
きっと勝てる。
私なら勝ち抜ける。
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