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兄はコトリを愛玩動物のように扱うことこそあれ、真剣に心を砕く機微を持ち合わせているようには見えなかった。基本的に、父親に忠実であること。それが兄、ワタリの信条なのである。
それ故、コトリは二人の真意を図りかねていた。どう考えても裏があるように思えてならない。
「しかし、帝国には既に二十四名の妃様がいらっしゃるとか」
王の説明によると、コトリは二十五番目の妃として召し上げられるという話だ。しかも、皇帝は御年五十二歳。未だ十六歳のコトリなど、下手をすれば孫のようなものだろう。
「良いではないか。まだ二十五番目なのだ。月に一度ぐらいはお渡りがあるかもしれぬ。お前の役目は分かってるな?」
今度こそコトリは、目に見える形で身震いをした。とても受け入れられそうにもない命令。コトリは作戦を決行することにした。ゆっくりと首をもたげて、愛らしい顔を王へ向ける。
「ならば、こうするまでです」
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