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「コトリは、父上も兄上も大嫌いにございます」
冷ややかな静寂が、豪奢な部屋を支配した。
王もワタリも、コトリのことを軽視してはいるが、決して嫌われたくないとも思っている。相当に傷ついた様子の二人の顔を確認すると、コトリは笑みを浮かべそうになるのをぐっと堪えた。
「コトリ、どうすれば許してくれるんだい?」
コトリはワタリへ返事する代わりに、部屋の片隅にあった楽器に目をやる。シェンシャンと呼ばれ、クレナ国に古くから伝わる弦楽器。ここにあるものは所謂国宝だ。
コトリは、今思いついた風を装って話し始めた。
「私、王女を辞めさせていただきます。私は、楽師になりとうございます」
王は無表情で、ワタリは心底呆れた顔でコトリを見つめている。
「これを認めてくださいましたら、私、自害は諦めますわ」
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