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巨大な体躯からは想像も出来ぬ俊敏さで飛び掛かる。
だが戦士はたじろぐことも無い。獣の爪が戦士の鎧に達する直前、戦士は携えた大剣を払い上げる。
此方もまた見た目とは裏腹の機敏さであった。
爪は剣に弾かれ、わずかに獣の体勢が崩れる。ほんの一瞬生まれた僅かな隙。それを見逃さず、戦士は振り上げた剣を全力で振り下ろした。
轟音を立てて迫る刃。流石に直撃してはひとたまりも無いと、獣は軽やかに身を翻し、その場を飛び退いた。
大剣は標的を失うももはや止まらない。勢いそのままに振り下ろされた刃は地を砕き、濛々と砂塵を巻き上げる。
超重量の大剣の破壊力。それを容易く振るう戦士の力。
恐るべき力をまざまざと見せつけられ、獣は剣の届かぬ距離から戦士を睨みつける。逆立ち、蛇のように蠢く尾は獣の怒りを物語っていた。
再び獣が低く唸る。
否、ただ唸っている訳では無かった。唸り声をあげる獣の口から、真っ赤に燃える炎が漏れる。炎が口の中で渦巻き、燃え上がり、輝きを増していく。
獣が吼えた。
咆哮は紅蓮に燃える炎となり戦士に襲い掛かる。
避けるような時間など無かった。瞬く間に炎は戦士を飲み込み、火柱を上げて煌々と燃え上がる。
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