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揺らめく炎の中で人影が動いた。
巨大な剣が空を薙ぐ。
巻き起こる風圧が炎を散らす。
炎が消えた後に立っていたのは、焦げ跡一つ付いていない戦士の姿だった。
「オリハルコン製の甲冑か。村の人間ではないな」
獣が忌々し気に吐き捨てた。
オリハルコン。
魔力を宿す希少な鉱物で、それを精製して作られた防具は炎や雷は勿論、魔術からも身を守ると言われていた。
元々の鉱石が希少な上に最近になってようやく精製可能になった代物で、オリハルコン製の防具は非常に高値で取引される。戦士の纏う甲冑が全てオリハルコン製というのなら、ちょっとした城が買えるくらいの値はつくだろう。
「まぁな」
戦士は応じた。男の声だ。
「しかし、人の言葉が分かるとはな。これも仕事だ、悪く思わんでくれ」
少しばかり申し訳なさそうな声で告げると、戦士は大剣を構え獣に斬りかかった。
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