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第三章 激戦
獣は焦っていた。たかが人間一人に手こずることになろうとは思ってもいなかったからだ。
しかし、現実に押されている。
あれほど巨大な剣を振り回しているというのに、戦士は疲れる気配もない。
むしろ、疲弊しているのは逃げ回っている獣の方だった。
「ちょこまかと、見た目のわりに臆病な奴だな」
「そのような安い挑発に乗ると思っているのか?」
距離を取り続ける獣を戦士が煽る。その言葉を一笑に付す獣だったが、延々と逃げ回っていても埒が明かないのも事実だ。
幾度目になるだろうか、戦士が斬りかかる。またも獣は器用に斬撃を逃れ、振り下ろされた剣は地に沈む。
その瞬間、獣は再び身を翻し大剣の上に飛び乗った。
「えぇい、鬱陶しい!」
大剣を振り上げ払い落とそうとする戦士。
が、大剣は上がらない。
当然だ。ただでさえ重量のある大剣に、獣の重量まで加わったのだ。そう簡単に持ち上がる訳が無い。
「ちっ」
思わず舌打ちを漏らす戦士。それを見て獣は笑った。
間髪入れずに獣は跳んだ。鋭い牙を剥き出しにして、強靭な顎が戦士の頭を甲冑ごと噛み砕かんと迫る。
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