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「喰われて……たまるかっ!」
戦士は声を荒げた。
突如、鈍い衝撃が獣を襲う。予想だにしていない反撃に、たまらず獣の身体はもんどり打って地に転がった。
「貴様、化け物か」
地に伏した獣は、信じられぬとばかりに自分を跳ね飛ばしたもの――戦士の拳を見上げた。大剣を手放し、籠手に覆われた拳で力いっぱい獣の横っ面を殴りつけたのだ。
遥かに体躯で勝る獣を殴り飛ばすなど、到底考えられることではない。獣は愕然としていた。
「お前に化け物扱いされる覚えはない。さぁ、覚悟してもらおう」
再び大剣を手に獣へ詰め寄る戦士。
「やむを得んか……」
このままでは敗ける。
本能的に悟った獣は脱兎のごとく駆けだした。
「おい、待て!」
慌てて後を追いかける戦士だったが、素早さでは獣の方に分があった。両者の距離はどんどんと開いていく。
獣は山肌を駆けあがり、山の中腹に開いた洞穴へと逃げ込んだ。
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