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大和社長が立ち去ってからも、次々と多くの人が訪れた。どいつもこいつも隣に若い女性を連れていた。俺はその都度結婚したことを伝え、隣に立つ遥菜を妻として紹介した。
そんな中、スノーエージェンシーの佐山さんがやってきた。
「綾瀬常務、もうびっくりしましたよ。さっき郁人から、いや副社長から常務が結婚されたと聞いて……、それもうちにいた桜井さんだと聞いて、もう本当にびっくりして……。先ほどからどこにいらっしゃるのかとずっと探しておりました」
佐山さんは本当に驚いているようで、目を丸くしながら俺と遥菜を交互に見ている。
「桜井さん、うちを辞めたのはもしかして常務と結婚する予定があったからだったのか? それならそうと言ってくれれば……。私はてっきり実家に帰ってご両親のクリニックを手伝うのかと……」
遥菜を見ると、返事に困っている様子だった。
そうだよな。
確か遥菜は実家に帰るからと言ってスノーエージェンシーを辞めたんだったよな。
「佐山さんすみません。僕が遥菜に実家に帰らないでほしいとお願いしたんですよ。遥菜は本当にご両親のクリニックを手伝う予定にしていたのですが、僕がどうしても遥菜と離れたくなくて……。僕のわがままなんです」
遥菜の肩に触れ、自分の方に少し引き寄せながら佐山さんに笑顔を向けた。おそらく仲の良さをアピールしておけば、佐山さんには信じてもらえるだろう。
「いやぁ、そうでしたか。こんな嬉しい再会があるとは……。桜井さんはスノーエージェンシーにいたときから結構彼女のファンがいましてね。桜井さんは知らなかったと思いますが社内外問わず、とても人気があったんですよ。常務も心配で離れたくない気持ちはとてもよくわかります。あっ、そうだ。おい、町田、ちょっとこっちに……」
佐山さんが斜め後ろを振り返りながら、誰かを呼んだ。
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