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遥菜の顔を両手で挟み、ゆっくりと自分の方へ向ける。
遥菜の顔が真正面に飛び込んできた。
心臓が一瞬ドクッと反応した。
おでこに触れながら、何もなっていないか確かめる。
「痛いか? 少し赤くなってるな。大きな音だったから後で腫れるかもしれないな」
可愛い遥菜の顔が目の前にある。
俺は周りを忘れてこのまま唇を重ねてしまいそうになった。
「いっ、痛くない。痛くないです……。もっ、もう大丈夫です」
遥菜の声に、ふと我に返る。
俺は手に持っていたコートを遥菜の身体にかけ、早川の方に向いた。
「早川、遅くまで悪かったな。後は適当に帰るから。お前も早く帰ってゆっくり休め」
「畏まりました。常務、奥様、お疲れさまでございました。では失礼致します」
「早川さん、今日はありがとうございました。遅くまですみませんでした。本当にありがとうございました」
遥菜が早川に笑顔を向けながら礼を言う。
その笑顔に早川もニコニコと微笑みながら答えていた。
「いえ、奥様。僕もたくさんお話ができてとても楽しかったです。では失礼致します」
遥菜が早川に向ける笑顔でさえ、今日はなんだか腹立たしい。
今日の俺はどうしたんだ?
どうしてこんなにイライラするんだ。
ドレス姿の遥菜に欲情しているのか?
しばらく女に触れてなかったから興奮しているのか?
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