理人Side⑤ -穏やかな休日-

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「でも……、今日はお仕事だったのにお布団で寝ないと疲れも取れなかったですよね? 本当にすみませんでした」 やっぱり何も言ってこない。 もしかしたら、抱き締めたことも泣いたことも何も覚えていないのかもしれない。 覚えていなくてよかったという自分と、少し残念だと思う自分が交互に顔を出す。 「じゃあ、そんなにすみませんと思うなら、明日の夕飯のリクエストしていいか? 明日の夕飯は、この間バーで食べたパスタとサラダにしてくれないか? ちゃんと再現出来ているか俺がチェックするよ。再現出来ていたら、今回遥菜が泥酔して帰ってきたことは忘れることにしよう」 今の俺に出来ることは、とにかく遥菜を元気づけることだ。 もうあんな風に泣かないように──。 ここにいる間は笑顔でいられるように──。 遥菜の顔を覗き込みながら、悪戯っぽくニヤリと微笑んでみる。 「わかりました。頑張って再現してみます」 遥菜はどこか嬉しそうに小さく笑顔を向けながら頷いていた。
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