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スーパーでカートを押す遥菜の後ろを着いて行きながら、俺は陳列されたたくさんの商品を見ていた。
スーパーに来たのなんて本当に久しぶりのことだった。
小さなころに母親と一緒に来た記憶があるくらいだ。
社会人になってからは煩わしくて特定の彼女は作らなかったし、唯一梨香子と付き合っていたときもほとんど外食だった。
それに梨香子の仕事が夕方から始まることもあって、一緒に買い物に行ったことも、食事を作ってもらうということもなかった。俺に食事を作ってくれたのは、母親と家政婦のタキさんを除くと遥菜が初めてだった。
そんなことを考えながら歩いていると、遥菜がフルーツコーナーで止まっていた。
何を買うのか考えているのだろうか。
それならフルーツのリクエストがしたい。
「なあ、果物買うのならリクエストしていいか? 俺キウイがいい」
遥菜がたまに朝食のデザートとして出してくれる黄色っぽいキウイがいつも甘くて旨かった。
どうせなら、あのキウイが食べたい。
「キウイ? 理人さんキウイが好きなんですか?」
「いや、そういうわけじゃないんだが、遥菜が朝たまに出してくれるだろ。黄色っぽいやつ。あれ、甘くて旨いんだよな」
「あっ、ゴールデンキウイですね。私も甘くて大好きです。わかりました。じゃあゴールデンキウイと……、他に食べたいフルーツってありますか?」
「いや、あとは特に……。だが、果物はできれば甘い方がいい」
俺の甘い果物というリクエストに、遥菜はキウイの他にマンゴーを2つ選んで買い物かごの中に入れた。
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