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「は、はい……」
神妙な顔をして俺を見つめる遥菜。
「悪い。ごめん……。ちょっと意地悪しずぎた……」
俺は我慢できなくなり、クククッと笑いながら遥菜に笑顔を向けた。
「えっ?」
「旨い。めちゃくちゃ旨い。ちゃんと再現できてるよ。すごいな、遥菜!」
遥菜は一瞬呆然としたあと、嬉しそうな笑顔を俺に見せた。
「ほんとですか? ちゃんと、ちゃんと再現できてましたか? あーよかった……。私、本当に心配だったんです……。理人さん何も言ってくれないし、やっぱりダメだったのかなって」
「遥菜が気にしてるのが可愛くてもう少しこのまま無言で食べ続けようかと思ったけど、できなかった。ずっと心配そうにこっちを見てるんだもんな」
恥ずかしそうに俺を見る顔。
あー、可愛すぎて抱き締めたい。
いっそのこと自分のものにしてしまいたいという男の欲望が出てくる。
「こんなに料理が上手いと遥菜と……」
「えっ?」
「いや、マジでちゃんと再現できてるよ。このサラダも美味しいし、パスタは本当に旨い。俺はこのペペロンチーノ、すごく好きだよ。遥菜は本当に料理が上手だな」
俺は無意識に「こんなに料理が上手いと遥菜とこのままずっと一緒にいたくなる」と言いそうになり、慌てて言い直した。
俺は何を言おうとしてるんだ。
忘れるな。俺たちは契約結婚だ。
契約結婚だから遥菜も了承してくれたんだ──。
俺は必死で自分の気持ちを押し殺していた。
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