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理人Side⑥ -遥菜を傷つけた男-
遥菜が酔いつぶれて帰って来てから数日後、スノーエージェンシーの町田という男からメールが送られてきた。
メールの内容は、デザイン集を見てもらいたいから都合のいい時間を教えてほしいというものだった。
先日約束したこともあり、俺はピンポイントで3日後の16時からしか空いていないと返事をすると、すぐにその日に伺うという連絡が入ってきた。
そしてアポイント当日、その町田がやってきた。
外見はチャラいが、営業マンらしく完璧な笑顔と頭の回転の良さを持ち合わせていた。
「綾瀬常務、本日はお時間を作っていただきありがとうございます」
俺の前にビシッと立ち、丁寧に挨拶をする。
「いや、アポイントの日程がピンポイントで申し訳ない」
「いえ、とんでもございません。お時間を作っていただいただけで充分です」
町田は鞄の中からデザイン集を出すと、机の上に広げた。
「こちらが弊社が今まで手掛けた広告です。もし気に入っていただけたものがございましたら、どんなことでも構いません。ご連絡いただけますでしょうか」
さすがに不動産をメインに広告を作っている会社だけある。今まであまり目にしたことがないようなデザインもあった。
俺はひと通り目にすると、何かあったら連絡すると言って見ていたデザイン集を返した。
「綾瀬常務、こちらは返却いただかなくて大丈夫です。御社に置かせていただいてもよろしいでしょうか」
町田はすかさずそのデザイン集を俺の方へ向け直した。
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