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「俺の妻に対して思い込みが激しいとは失礼な物言いだな。それに遥菜と呼んでいいのは夫である俺だけだ。気軽に名前で呼ばないでもらいたい。不愉快だ」
「もっ、申し訳ございませんっ」
「もう結構だ、気分が悪い。帰ってくれないか。この話はなかったことにする。そのデザイン集を持ってさっさと帰ってくれ」
「あ、あの、綾瀬常務……」
「聞こえなかったか? 俺は君に帰れと言ったんだ。だいたい人の妻を侮辱しておいて、それに俺のことまで侮辱しておいて、そんなヤツと一緒に仕事をする企業があると思うか? 遥菜が思い込みが激しいだと? 俺が遥菜じゃなく他の女を抱き始めるだと? 仕事をもらうときだけいい顔をしておいて陰でそんなこと言っているヤツのどこが信用できるかっ!」
「いえ、そういうつもりでは……」
町田は顔色を変え、口籠りながら黙り込んだ。
その顔を見て、俺はあのパーティーが開催された数日後、俺の会社のパソコンに送られてきたメールを思い出した。
「ああそうだ。もうひとつあった。お前、俺にこのメールを送ってきただろ?」
俺はプリントアウトしてあったメールを手帳から出し、キッと鋭い視線で睨みながら机に叩きつけた。
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